【#5】自信を持てない息子に、母として伝えたかったこと

✔️本記事は「子育てのモヤモヤ」シリーズ本編④です。

「どうせできない」
「オレは無理」

そんな言葉を息子が口にするようになったのは、小学校高学年になってからでした。
実際に大きなミスや失敗をしたわけではないのに、ネガティブな想像が先に立ち、怖くなって挑戦する前からあきらめてしまう。

励まそうと「できるよ」「大丈夫だよ」と声をかけても、当時の彼にとっては、その言葉がプレッシャーにしかならなかったのかもしれません。
「挑戦しない」選択をした自分を否定されたように感じたのかもしれません。

応援しているつもりだった私は、知らず知らずのうちに、彼から“自信”という羽根を一枚ずつはぎ取っていたのではないか。
そう思うようになったとき、私自身も、親としての自信を失いかけていました。

「自信がない」には、2つの理由があると知った

そんな時に出会ったのが、「自己肯定感」に加え、「自己効力感」という概念でした。

  • 自己肯定感:自分は大切な存在だと思える気持ち
  • 自己効力感:自分には「やればできる力がある」と思える見通しや手応え

私たちはよく「うちの子、自信がなくて」と言いますが、
その“自信”は実は、2つの別の側面から見直すことができると知ったのです。

息子が口にしていた「どうせ無理」は、自己効力感の低さから来る言葉だったのかもしれません。
つまり「やってもうまくいかないだろう」「失敗したら怖い」といった“見通しの弱さ”だったのです。

「親の評価」が前提になっていなかったか、振り返った

そんな視点で見直してみると、思い当たることがありました。

私が息子にかけていた言葉の多くは、

  • 「すごいね」
  • 「よくできたね」
  • 「えらいね」

といった“評価”の言葉ばかりでした。
もちろん、これらの言葉自体が悪いわけではありません。
でも、「結果」にばかり焦点を当てていたことで、
息子は「できなかったら、認められない」と感じていたのかもしれないことに気が付きました。

「プロセスを見る」声かけに変えてみた

そこで私は、声かけを少しだけ見直すことにしました。

  • 「すごいじゃん!」→「最後までよくあきらめなかったね」
  • 「よくできたね」→「コツコツ頑張っていたの、ちゃんと見てたよ」

「できたかどうか」ではなく、「どう向き合っていたか」を伝えるようにすることで、すぐに目に見える変化があったわけではありません。けれども、思春期のクールな次男が、無表情の裏に照れた自分を一生懸命隠していることは見えてくるようになりました。

自信を育てるために意識した、2つのこと

私が実践してみて、手応えを感じたのは以下の2つの関わり方です。

① リフレーミング

一見すると短所に思える子どもの特徴を、親が別の角度から捉え直して言葉にしてみることです。

たとえば…

「飽きっぽい」→「いろんなことに興味を持てるんだね」
「慎重すぎる」→「しっかり考えてから動けるタイプだね」

こんなふうに言葉を少し変えて伝えるだけで、
子どもは自分に対する感じ方が少しずつ前向きになっていきます。

その結果、「自分って、案外悪くないかも」と思えるようになっていくのです。

② 承認

「ちゃんと見てるよ」「わかってるよ」と、親が子どもの姿に目を向け、声をかけること。
結果の良し悪しに関係なく、努力している様子や迷ったこと、選んだ行動そのものに目を向けて認めていくことで、
子どもは「自分には価値がある」と感じやすくなります。

そうやって日々の小さな選択や行動を受け止めてもらえると、
子どもは次第に「これでよかったんだ」と、自分の行動に手応えを感じ始めるようになります。

 

自分の言葉で、頑張りを語れるようになった

息子は今でも「自信満々」とは言えません。
でも最近は、「あれ、ちょっと頑張ったかも」と自分から話してくれるようになってきました。

そしてある日——
中学1年生の体育祭。
あれほど「出たくない」と言っていたリレーの選手に、自分から立候補したのです。
学校から帰ってきた息子は、わざわざ私のそばに来て、「オレ、出ることにした」と報告してくれました。

彼なりに、波ならぬ勇気を出したのだと思います。
私は思わず「すごいじゃん!」と言いかけたけれど、それをグッと飲み込みました。

代わりに伝えたのは、こんな言葉です。

「自分で決めたんだね。なんだか嬉しいなぁ。」

彼の“選択”を、ただまっすぐに受け止めたいと思ったのです。

 

最後に:親もまた、自信を育てながら歩いている

自信を育てるには、時間がかかります。
そしてそれは、親である私たちも同じだと思うのです。

どんな声かけが正解か、私も今でも手探りです。
でも、少しずつ、向き合い方を変えていく中で、子どもが「自分の力で動けた」と思える瞬間が生まれてくる。

そのとき私たちは、「ああ、信じてよかった」と思えるはずです。

完璧な子育てなんて面白くないし、ありえない。
大切なのは、「あなたの頑張りを、私はちゃんと見ているよ」と、子供にちゃんと伝えること。

その一言が、彼らの背中をそっと支える力になるのだと、私はそう信じています。