思春期の子どもが自信をなくしている理由|母としてできる心の寄り添い方とは?

「下の子が最近、何をするにも自信がないみたいで・・・」

そんな言葉をこぼしたのは、先日お会いした子供の同級生のお母さん。
思春期に入り、自分の存在価値を問い始めた息子さんに対し、どう接したら良いのか分からない・・・
私にも同じ経験があったので、友人として、そして母として、彼女の悩みに深く共感しました。

 

今さら気づいた「下の子」への扱いの差

彼女の話を聞くと、上の子の進路や学力をずっと気にかけてきた一方で、下の子のことは「大丈夫だろう」とどこかで後回しにしていたそうです。
私も子供が二人いるのでよく分かるのですが、一般的に、上の子はのんびり、下の子はそれを見て育つ分、要領よく振舞っているように見えたりするのです。

彼女の場合も、上の子の時は、日々の勉強を見てあげたり、習い事の送迎にも積極的だったのに、下の子には旦那さんに任せたり、「もう、一人でできるよね?」と「一緒に」何かをする経験が極端に少なかったようです。

下の子が「ねえママ、見て」と話しかけてきても、「ちょっと待ってね」「今忙しいからあとでね」と返してしまう。

当時は悪気もなく、「聞けるときにちゃんと聞いていたつもりだった」けれど、でも今となって思うのは、下の子は本当は寂しかったんじゃないのか、何かの小さなサインを見逃していたのではないか、今になってその影響が表れている気がしてならないと、涙ながらに話してくれました。

それに加えて、思春期になってから、下の子に向かって「なんでそんなこともできないの?」と責めるような言葉を使っていた、それは上の子には絶対に言わなかった言葉だった…そう気づいたとき、胸が締めつけられ、それ以降激しい後悔に襲われていたようです。

  

下の子が抱えている悩みのサイン

彼女の話には、母としての後悔と戸惑いが溢れていました。

実際に、下のお子さんいつもどこか自信がなさそうに見えるそうです。 自分から「どうせ無理だし」「やっても意味ない」と言って、新しいことへの挑戦を避ける。そして、何かに誘っても「いいや、べつに」と答えるばかり。
あきらめの早さや、感情を表に出さない姿勢は、ただの反抗ではなく「自分なんて…」という深い自己否定感の現れではないかと不安に思ったようです。

さらに気になったのが、交友関係です。 特定の友人グループからは離れようとせず、新しい関係を築こうとしない。SNSで既読がつかないと、「嫌われてるのかも」「やっぱり自分なんか…」と急に気持ちが沈む

周囲から見れば「繊細な子」と表現されがちですが、親として見ると、その子は「人を信頼すること」そのものに迷いや不安を感じているように映っているのです。

「このまま大人になっても、人間関係でつまずくのではないか」

「自分を責め続ける癖が強くなってしまうのでは」

そんなお子さんへの心配が、お母さんの心に重くのしかかっているようでした。

  

コーチング的視点から見える「今からできること」

コーチングを勉強してきて、そして、やはり同じように「下の子」への接し方で悩んでいた私が彼女にお伝えしたのは、「正しさ」や「教育的指導」ではなく、まずは関係性」をもう一度見つめ直すという視点です。

1. アクティブリスニング(傾聴)

遮らず、否定せず、最後まで「聴く」こと。

「そう思ったんだね」「それは辛かったね」と受け止めるだけで、 子どもは「聞いてもらえた」という安心感に包まれます。

話すことで気持ちを整理できる子どもも多く、自分の中にある不安や葛藤を言語化できるようになります。
やがて、「ママなら聞いてくれる」と思えるようになり、信頼関係が少しずつ築かれていくのです

2. リフレーミング(視点の転換)

ネガティブな言葉の裏にある「本音」や「願い」を見つけて伝える技法です。

「どうせ自分なんて」と言った時、 「それは、“本当は分かってほしい”っていう気持ちなのかもしれないね」と返してみる。

この言い換えによって、子ども自身が「自分の本当の気持ち」に気づくことがあります
そして、ただの投げやりではなく、「わかってほしい」「そばにいてほしい」という願いを、少しずつ素直に表現できるようになっていきます。

3. Iメッセージ

「あなたは〜」ではなく、「私は〜」で気持ちを伝える方法。

例えば…
「あなたは冷たい」ではなく、「私は、返事がないと寂しく感じる」

この表現に切り替えることで、子どもは「責められている」のではなく、「大切にされている」と受け取るようになります「自分のせいだ」と思いやすい子にとって、安心して感情を受け取れる関係の第一歩になります

4. 小さなYESを重ねる関係づくり

特別なことをしなくても、関係は温め直せます。

「一緒にお茶を飲まない?」「少しだけ話してみない?」

小さなYESが積み重なることで、「受け入れられている」「自分はここにいていいんだ」という実感が育ちますやがて、親子の会話が自然と増え、気まずさや距離感がやわらいでいきます。

 

後悔ではなく、「今ここ」から始めよう

私自身も、かつて下の子の心が見えなくなっていた時期がありました。上の子にばかり意識が向き、下の子との時間や会話がどこか後回しになっていたことに、彼女同様、ある日ふと気づいたのです。

私はまずそのことを、上の子に伝えました。 「お母さんは、下の子にもっと関心をもって時間を使ってあげればよかった。今、そのことを悔いている」と。

それを理解してもらったうえで、私は、下の子と「二人だけのデート」をするようにしました。近所のショッピングモールに文房具を買いに行ったり、荷物を運んでほしいとお願いして一緒に出かけたり。帰りにちょっとしたスイーツを食べて帰るだけの時間でも、下の子の表情が少しずつ柔らかくなっていくのを感じました。

心の距離は一日では縮まりません。 けれど、小さな一歩を積み重ねることで、確かに「通じ合える感覚」が戻ってきます。

子どもとの関係は、今からでもやり直せます。 気づいたときが、立ち止まって向き合うタイミングです。

過去の接し方を責めるよりも、「これから、どう向き合うか」。 その選択が、きっと未来を変えていきます。

あなたの小さな一歩が、子どもの自己肯定感を少しずつ育てていくからです。

あなたに問いかけたいこと

あなたの大切な人に、伝えそびれてきた気持ちはありますか?
今日、たったひとことでも構いません。あなたの声で、関係をあたため直してみてはいかがでしょうか。